人の意見を聞き入れるのは、同じような意見の時だけらしい

 人は意見を持つとその意見に固執しがちです。その脳的メカニズムの一端は玉川大の出馬先生らによって明らかにされています。いわゆる「すっぱいブドウ」効果です。
 出馬先生らは大学生男女20名にMRIスキャンをしながら160種類の食べ物(コンビニエンスストアなどで売られている商品)に対する好みの度合いをひとつづつ回答してもらいました。すると、好みの度合いは報酬に強くかかわる線条体の活性化と相関していました。次に、同程度に好きだと回答した食べ物二つのうちから一方を選んでもらい、最後に再び160個の食べ物を提示し好みの程度をこたえ、同時にMRIスキャンを行いました。このとき、同程度に好きな食べ物の選択時に選ばなかった食べ物の場合はそのことを提示しました。
 結果、同程度に好きな食べ物を選ぶときに、選ばなかった食べ物では、その好きな度合いが下がり、同時に線条体の活性化も低下していたそう。またその食べ物が選択されなかったことを示したとき、矛盾の知覚や調整にかかわる前部帯状回や背外側前頭前野の活動が高まっていたそう。
 人は何らかの選択をすると、選択しなかった方の評価が主観的にも脳的にも低下し、自己選択を強化しようとするらしいのです。ポジショントークは批判されがちですが、人の本質的傾向でもありそうなのです。認知的不協和を調整して好みを変化させる力動が働き、それを知覚すると矛盾の調整が事後的に生じるらしいのです。
Neural correlates of cognitive dissonance and choice-induced preference change.
Izuma K, Matsumoto M, Murayama K, Samejima K, Sadato N, Matsumoto K.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Dec 21;107(51):22014-9

 ↓も似た実験だが、自己選択の影響ではなく、他者の意見の影響を調べたもの。
 42人の被験者をペアにし、ある住宅の価格を推定するようおのおのに求められます。この時、一定の金額が提示され、その提示金額より実際は高いと思うか、低いと思うかを答えます。またその答えへの賭け額を決めます。自信があれば高い掛け金になるわけです。
 次に、MRIスキャナーの中に入り、自分の判断を思い出させる数値が提示されます。高いと思ったか、低いと思ったか、その判断へのかけ額です。このとき、ペアの相手の判断および掛け金も映します。そして最終的な決断を求めます。
 結果は二つの場合があったそうです。ひとつはペアの相手が同じような判断(高いまたは低い)をしていた場合で、この場合は相手の掛け金の額を高ければ自分の掛け金の額を上げる傾向が強かったそう。一方で、高い低いの意見が異なる場合は掛け金に変更はなかったそう。つまり、他者の意見は自分の意見と同様だった時に自分の意見を強化する方向に働くが、異なる意見なら影響を受けないというもの。
 そして、この時の変更には後内側前頭前野(pMFC)の活動がかかわり、相手の確信度が高いほど(掛け金が高いほど)、この部位の活動が高まったとか。一方、そもそもの意見が異なる場合には、相手の確信度を反映する脳活動は見当たらなかったそう。
 われわれは自分である種の選択をした時には意見を変えやすいし、それをサポートする脳的仕組みも働きやすい。また、同じような意見を持つ人の確信の強さに影響されるが、異なる意見に対しては基本「無視」。後内側前頭前野(pMFC)は全部帯状回や背外側前頭前野同様、意思決定や矛盾の調整にかかわるのですが、この部位での矛盾の調整は、同種の意見の間でしか生じないのかもしれません。
Published: 16 December 2019
Confirmation bias in the utilization of others’ opinion strength
Andreas Kappes, Ann H. Harvey, Terry Lohrenz, P. Read Montague & Tali Sharot
Nature Neuroscience (2019)

 余談ですが、「線条体」を含む大脳基底核には、直接路と間接路があります。直接路は報酬にむすびつく行動を促進、強化し、後者は逆に報酬につながらない行動を抑制します。
 ↓は、これらの経路が単に報酬につながる行動を選択、強化するだけではなく、その報酬を獲得するための行動速度を調整する、つまり勢いよく近づいたり、のろのろ近づいたりの速度調整もおこなっていることが、光遺伝学的手法によって明らかになったのだとか。マウスで、自発運動中に直接路または間接路を光遺伝学的に刺激すると、両経路とも、動機付けには影響を与えることなく、特定の運動を学習によって加速したり減速したりでき、この調整はドーパミン依存的だったとか。
 これはネズミの実験ですが、人でも同様であり、かつ、この行動は自己肯定的だろうと想像されるわけです。
Opponent and bidirectional control of movement velocity in the basal ganglia
Eric A. Yttri & Joshua T. Dudman
Nature 533, 402–406 (19 May 2016) doi:10.1038/nature17639

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