災害時のストレス対応

 災害や大事故、テロなどが起こったとき、厚生労働省のガイドライン(https://www.ncnp.go.jp/nimh/pdf/saigai_guideline.pdf)によれば、住民の約20%に広い意味でのPTSD(心的外傷後ストレス障害*文末に説明)が生じるが、約80%は自然回復するそうです。しかし、災害等の体験後、半年から1年以降は自然回復はほとんど見られなくなるそうです。
 ですから、誰でもがPTSDのおそれがあるなどという理解は間違っていますし、心理ケアが真の意味で邪魔でしかないことも多々あります。災害などの大きなストレス後は自然回復を促進する要因を強化し、妨げる要因をできるだけ取り除くことです。

厚労省ガイドラインでは自然回復を促進する要因として以下があげられています。
<現実面>
(1)身体的安全の確保
(2)二次的災害からの保護(地震の後の火災、有毒物質等の汚染など)
(3)住環境の保全
(4)日常生活の継続(学校、仕事、日常的な家事など)
(5)経済的な生活再建への展望(経済的基盤、職業の確保、家屋の復旧など)
(6)生活ストレスからの保護(避難先での生活上のストレス、取材など)
<一般的サポート>
(6)災害、援助に関する情報
(7)援助者による現地の巡回
(8)住民から見て援助が「手の届くもの」と感じられること
(9)住民からの要望、質問に迅速に回答が得られること
<心理的ケア>
(10)心理的な変化に対する情報・教育(症状だけではなく、健全な状態や
回復時の状態についても情報を与えること)
(11)必要時の相談先の明示(ホットライン、相談窓口)

逆に自然回復を阻害する要因として以下があげられています。
<現実的援助の遅れ>
(1)生活再建の遅れ
(2)避難先での生活環境の悪化、プライバシー確保の困難
(3)家族・知人の死傷、消息不明
<災害弱者(自分がそうである。家族にそのような者がいる)>
(4)乳幼児
(5)高齢者
(6)障害者
(7)傷病者
(8)日本語を母国語としない者
<社会機能>
(9)単身者
(10)家族以外に話し相手がいない
<その他>
(11)本人の意に反した取材活動
(12)警察、行政、保険会社などによる事情調査

当り前なことですが、心理面にとっても大事なことは迅速な復旧です。そしてその過程での住民の不安を取り除く情報の充実、サポートの充実です。
ここでは、アメリカ国立PTSDセンターと、アメリカ国立子どもトラウマティックストレス・ネットワークが開発した「サイコロジカル・ファーストエイド 実施の手引き 第2版」(Psychological First Aid ; PFA)からリラクゼーション法のひとつ呼吸法を紹介します。なかなか進まない復旧や不安への対処として、昼のあいだにリラクセーションを行ない、気持ちを穏やかにする時間を作ることも有効です。そうすることでよく眠れるようになったり、集中力が高まったり、生きていくためのエネルギーがでてきたりすることもあります。リラクセーションの方法には、エクササイズ、呼吸法、瞑想、水泳、ストレッチ、ヨガ、寺院への参拝、運動、気持ちが穏やかになる音楽を聞く、自然のなかで過ごすなどありますが、ここでは簡単な呼吸法を紹介します(兵庫県こころのケアセンター、http://www.j-hits.org/psychological/index.html、「サイコロジカル・ファーストエイド 実施の手引き 第2版」日本語版より)。

あなた自身のために
1. 鼻からゆっくり息を吸ってください――ひとつ、ふたつ、みっつ――肺からお腹まで、気持ちよく空気で
満たします。
(おなかがふくらむように・・・篠原補足)
2. 静かにやさしく、「私のからだは穏やかに満たされています」と自分に語りかけましょう。
今度は口からゆっくり息をはきます――ひとつ、ふたつ、みっつ――肺からお腹まで、すっかり息をはききりましょう。
(おなかがへこむように・・・篠原補足)
3. 静かにやさしく、「私のからだはほぐれていきます」と自分に語りかけます。
4. ゆったりとした気持ちで、5回繰り返しましょう。
5. 必要に応じて、日中に何度でも繰り返してください。

子どもたちのために
子どもには、次のように呼吸法を指導しましょう。
1. からだをリラックスさせるのに役に立つ、ちょっと変わった呼吸の仕方を練習してみよう。
2. まず、片方の手をこんなふうにお腹のうえにおきます。 [実際にやって見せる]
3. そうそう。じゃあ、鼻から息を吸いましょう。息を吸うと、空気がいっぱい入ってきて、お腹がこんなふうに
ふくらむよね。 [実際にやって見せる]
4. 今度は、口から息をはきましょう。息をはくと、お腹がこんなふうにぐーっとへこんでくるね。 [実際にや
って見せる]
5. 3つ数えるよ。そのあいだ、ゆっくりゆっくり息を吸って。また3つ数えたら、ゆっくりゆっくり息をはいて。
6. はい、じゃあ一緒にやるよ。…よくできました!

ゲームに取り入れてみましょう。以下のような息を吐くゲームが有効です(篠原)
・シャボン玉をふく。
・チューイングガムで風船をつくる。
・丸めた紙や脱脂綿を、テーブルの端から端に吹き飛ばす。
・息をふーっとはく登場人物が出てくるお話をする。あなたがそれを真似て、子どもたちも一緒に息をすることで
手助けする。

次に「言ってはいけないこと」の記載を紹介します。
「深い悲しみの底にいる人自身がこのようなことを言った場合には、その人の気持ちや考え方を尊重し、受け入
れてください。しかし、こちらからこのような発言をしてはいけません」ということだそうです。

・お気持ちはわかります。
・きっと、これが最善だったのです。
・彼は楽になったんですよ。
・これが彼女の寿命だったのでしょう。
・少なくとも、彼には苦しむ時間もなかったでしょう。
・何か他のことについて話しましょう。
・がんばってこれを乗り越えないといけませんよ。
・あなたには、これに対処する力があります。
・彼が苦しまずに逝ったことを、喜ばなくては。
・我々は生き延びたことによって、もっとたくましくなるでしょう。
(That which doesn’t kill us makes us stronger. 哲学者ニーチェの言葉)
・そのうち楽になりますよ。
・できるだけのことはやったのです。
・悲しまなくてはいけません。
・リラックスしなくてはいけません。
・あなたが生きていてよかった。
・他には誰も死ななくてよかった。
・もっとひどいことだって、起こったかもしれませんよ。あなたにはまだ、きょうだいもお母さんもいます。
・この世に起こるすべてのことは、より高い次元の存在が計画した、最善の結果なのです。
・耐えられないようなことは、起こらないものです。
・(子どもに対して) これから、あなたが一家を背負っていくんですよ。
・いつの日か、あなたは答えをみつけるでしょう。

厚労省ガイドライン、「サイコロジカル・ファーストエイド 実施の手引き 第2版」(Psychological First Aid ; PFA)は見ておいて損はないと思います。

PTSDの主な症状と診断(http://www.jstss.org/topics/01/
侵入症状:トラウマとなった出来事に関する不快で苦痛な記憶が突然蘇ってきたり、悪夢として反復されます。また思い出したときに気持ちが動揺したり、身体生理的反応(動悸や発汗)を伴います。
回避症状:出来事に関して思い出したり考えたりすることを極力避けようしたり、思い出させる人物、事物、状況や会話を回避します。
認知と気分の陰性の変化:否定的な認知、興味や関心の喪失、周囲との疎隔感や孤立感を感じ、陽性の感情(幸福、愛情など)がもてなくなります。
覚醒度と反応性の著しい変化:いらいら感、無謀または自己破壊的行動、過剰な警戒心、ちょっとした刺激にもひどくビクッとするような驚愕反応、集中困難、睡眠障害がみられます。

上記の症状が1ヵ月以上持続し、それにより顕著な苦痛感や、社会生活や日常生活の機能に支障をきたしている場合、医学的にPTSDと診断されます。なお外傷的出来事から4週間以内の場合には別に「急性ストレス障害Acute Stress Disorder: ASD」の基準が設けられており、PTSDとは区別されています。

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