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zoom RSS 「ゲーム依存 困難な治療」こういう記事を読むリテラシー

<<   作成日時 : 2018/06/20 10:13   >>

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 読売新聞 2018.0620 3面に「ゲーム依存 困難な治療」といった記事が載りました。今後もこうした構成の記事がたくさん出てくると思います。
 脳システム論を受講されている学生諸君は、ゲーム障害、ギャンブル障害、発達障害を、ドーパミン神経系等の振る舞いやワーキングメモリの容量限界とともに学んでいるわけで、こうした記事を読むメディアリテラシーとして、以下の点は最低限把握しておいてください。

1)「ゲーム依存」という言葉が使われているが、これは日本独特の通称ということは知っておこう。論文検索で困ります。
 「gaming disorder」がICD11の呼称。なぜか邦訳はゲーミングではなく、ゲーム障害。
 「依存」という言葉はアルコ―ル、薬物でも使わない。
 またゲームではなく、ゲーミング。アルコール、薬物でもアルコール使用障害、精神刺激薬用障害であって、use、〜ing、つまり、使い方の障害。ゲームの仕方の障害。
 ギャンブル依存、ギャンブル等依存症も同様で、もとは、gambling disorder。

追記:日本精神神経学会はICD11の翻訳方針として、原則「disorder」を障害と訳さない。・・・病ダレの中に正とかく症がふさわしい、としているので、gambling disorderは「ゲーム症」と訳される公算が大きいそう。ならばgambling disorderは「ギャンブル症」か?・・もうややこしいので、これに従おうかな。。。。


2)「日本のネット依存成人421万人、中高生52万人。中高生の大半はゲーム依存」をうのみにしてはいけない
 WHOは「依存症はゲーム愛好家のごく一部で、2〜3%に過ぎない」と強調、しているが、日本のゲーム依存は極めて多いことになる。この調査を行った久里浜医療センターはギャンブル障害(ギャンブル依存)でも536万人とパチンコユーザーの大半が依存であるかのような報告を行い、のち、320万人と修正している。また、320万人は生涯のどこかで疑いがあった人で、直近一年間では70万人としている。インターネットゲーム障害の調査でも同様の問題(生涯か直近一年かなど、この調査ではICD11の一年続いているの視点がない)を含んでおり、注意を要する数字。
 また、この数字の後に、ゲーム障害(ゲーム依存)の例が示され、こういう人が数百万に及ぶかのようなミスリードが生じやすいが、この例は重症例で、421万人を信じるとしてもその一部。また、背景障害を疑うべき事例かもしれない。こうした「依存」関連事案では、全国調査の数字と重症例が並べられ、その数、重症者がいるような印象の記事が作られるが、読み手としては、比率感覚を持って読みましょう。

3)「ゲーム依存」がゲームのみによって引き起こされたかのように読んではいけない
 新聞では以下の事例が紹介されている。

中学入学後まもなく、疎外感から不登校、ひきこもり⇒朝10時から深夜1時まで15時間ゲーム⇒1年続き、ゲーム側にやらされている感じ、体にガタが来た⇒久里浜の外来へ⇒入院治療、復学⇒再び不登校、ゲーム漬け

 この事例にゲームが関与しているのは確かであろうが、ゲームが原因の単純嗜癖型なのか、背景障害の影響が大きい事例なのか、定かではない。うつ、発達障害、統合失調症、不安障害などを背景とする問題とみて、そこに対処すべき事案で、むしろゲームが救いになっている側面があるのかもしれない。
 ゲーム障害より研究が進んでいるギャンブル障害(ギャンブル依存)では、Blaszczynski, A. らが、ギャンブル障害の3Pathways Modelを提唱し、衝動型(ADHD型)、回避型(不安型)、いずれも弱い型の三タイプでのギャンブル障害の分類を提案している。日本のギャンブル障害回復支援施設のさきがけ、ワンデーポートの中村らは自閉スペクトラム症などの併存や発達のばらつきの存在を指摘している。ギャンブル障害では実際、併存障害が多く、Dowling NA et al.(2015)によれば、アルコール依存症 15.2%、薬物依存症 4.2%、大うつ病性障害 29.9%、双極性障害 8.8%、統合失調症 4.7%、パニック障害 13.7%、社交不安障害 14.9%、PTSD 12.3%、ADHD 9.3%、など併存障害全体では74.8%におよぶという。
 宮岡らは、「病的ギャンブリング「いわゆるギャンブル依存」の概念の検討と各関連機関の適切な連携に関する研究、2013」(厚労科研調査)で、日本のギャンブル障害を以下に区分している。
タイプI(単純嗜癖型:特に背景要因がなくギャンブルにはまる)
タイプII(他の精神障害先行型:大うつ病性障害、双極性障害、統合失調症、不安障害、パーキンソン病、むずむず脚症候群、アルコール使用障害など)
タイプIII(パーソナリティ等の問題型:境界性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害、アスペルガー症候群やADHD等の発達障害、もともとの生活上の問題、認知症、器質的な問題など)
 すなわち、ギャンブル障害の問題をとらえる場合、併存障害のアセスメントは必須で、単純嗜癖型としてのみギャンブル障害のすべてをとらえようとすると弊害を生む可能性がある。また単純嗜癖が病的といえる段階に至る背景には併存障害、パーソナリティ、ストレス状況などを想定する必要がある。
 ゲーム障害でも同様の背景を考慮する必要がある。背景にADHDなどがあり、それが増億要因になるとの指摘もあるので。

4)「患者の多くは体力が低下し、うつ病や自殺のリスクがたかまるとされている」の読み方
 ギャンブル障害でも自殺のリスクが指摘される。久里浜医療センターの平成25年6月〜26年12月までのギャンブル外来初診データでは35名中8名(22.9%)に自殺企図がみられており、自殺予防対策は急務である。一方で、社会安全研究財団の全国調査では、「ぱちんこ等で悩んだ末、自殺しようと思った」は「時々ある」「よくある」がユーザーの0.9%、0.4%。「自殺を図った」が0.4%、0.2%で、自殺についての全国調査での2〜3割程度に自殺念慮等がみられるのと比較すると、相当に少ない。
来院した人を後ろ向きで調査するのか(医師の印象など)、ゲームをしている人を前向きで追跡調査するのかで結果は大きく異なる。調査リテラシーでは当たり前のことがこうした場面で出てくることには注意が必要。
 一日10時間以上練習するe-sportsプレイヤーは体力低下が技術低下にむずびつくので、筋トレや有酸素運動を行っていたりする。
 余談だが、ギャンブル障害では、プロは除外される。ほか、双極性障害も。またICD11でのゲーム障害ではこまかな除外が示されていないが、併存障害問題含め、研究が進めば、ゲーム障害自体、単体疾患なのか、改めて問い直されるであろう。

5)中国の矯正施設の人権問題は注目
 「中国は10年前からゲーム依存症を含め、「インターネット依存症」として対策に乗り出し、矯正施設なども整備してきた。ただ、こうした施設に対しては、人権侵害といった批判が強い。」
 日本ではひきこもりの人たちを強制的に連れ出し、施設入所させる団体がマスコミにもてはやされた時があったが、今では批判を浴びている。ひきこもりは現象であって、その背後の障害等への対処なくして自立や強さを強制しても意味がないことが多いからだ。同様の問題はギャンブル障害でも起きているとの指摘もある。
 「ゲーム依存」だけではなく、さまざまな心理問題等は本質ではなく現象なのではないか、という見方は身に着けてほしい。

6)脳データの読み方に注意しよう
 これは皆さんには言わずもがなですし、この記事には記載のないことですが、ゲーム依存に関して、脳データが紹介されることがあります。fMRIのデータでは、ゲーム関連刺激で、ゲーム障害の人はそうでない人に比べて線条体など報酬反応に関連する脳部位が賦活しやすい、一方で、簡単がゲームに対して、反応が小さい、というものです。この際注意すべきは対照群の取り方です。ここではゲーム障害の方といわゆる健常な方の比較になっていますが、これだとゲームに興味ある人とない人の比較にすぎないかもしれません。ゲームに限らず、自分が好きなことに関連する刺激で報酬系が活動するのはよく知られた事実に過ぎないので、ゲーム好きのなかのゲーム障害と非ゲーム障害の方の比較が必要です。またゲーム慣れしている人からすると、実験に用いられている程度のゲームは面白くないので、素人は面白がって報酬系が活動しても、ゲーム慣れした人はそんなに報酬系が活動しないのも当たり前なので、ここでも、ゲーム慣れした人のなかのゲーム障害と非ゲーム障害の方の比較が必要です。あるいは、ゲーム慣れしていない人が実験的なゲームを相当数繰り返した時のデータと比較する必要があります。
 もっと本質的には横断データでは相関関係しか導けず、因果は語れません。非ゲーム障害がゲーム障害になっていく縦断的なプロセスを調べる必要があります。実際、薬物使用障害では、使用障害になる前から、実験的なゲームに対する脳反応が異なるとの報告があり、脳の差はもともとなのか、ゲームによるものなのか、その相互作用なのか、縦断データでなければ語ることができません。
 この横断データか、縦断データか、相関か、因果か、は、調査リテラシーの基本中の基本ですから、しっかりおさえておきましょう。ギャンブル障害で、脳がたくわん、もう戻らん、などという論もほぼ同じロジックなので注意しましょう。もともと報酬系なんて、やる気の仕組みですから。

7)ICD(国際疾病分類)よりICF(国際生活機能分類)の時代だと思うぞ
 国公立大には障害(精神も含む)に対する合理的配慮義務がある。環境調整で障壁(バリア)は下げられるという思想だ。困難は個体の側の問題ではなく、個体-環境間の関係性にあるという見方で、合理的に配慮できるものはして、障害を軽減しようとするものだ。その際、疾病、障害の種類にたいした意味はない。結局は落としどころの探索で、みな無理をしないこと。「治療」なんて概念がことをややこしくする。
 ICD入りでよいことは保険適用の可能性が高まること。しかし、ICF的な対応を保険対応にした方が、総額は抑制される。

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内 容 ニックネーム/日時
はじめまして、私もGREEのアプリに浸かってしまい、そこそこ散財しましたが、アプリが何時までも無い事と、リアルの知人から注意された事と、リアルに綱を引いていた為、リアルの仕事が多忙になり、アプリを止める事が出来ました。
ゲームに限らず、SNSをやるにしても常にリアルに足元を置いて使えばゲームやSNSにリアルが喰われる事は無いと思います。
yajiuman
2018/06/24 00:17

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篠原教授の 楽ラク脳トレーニング DVD全12巻
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