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zoom RSS 日本のギャンブル等依存症の回復率はやたら高い&ギャンブル等依存症話は過去一年有病率で

<<   作成日時 : 2018/01/20 20:42   >>

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 日本国内では久里浜の全国調査(2017)などの報道で生涯有病率3.6%(320万人)が主に報道されがちだが、最近の諸外国の調査では過去一年有病率をあわせて報告するか、過去一年有病率のみの報告が多い。久里浜調査では0.8%(70万人)。
 生涯有病率は過去のどこかでギャンブル障害の疑いがあったことを示すので、基本的に減らず累積していき、ためにギャンブル障害対策の効果の検証には使えない。とくに3)に示すようにギャンブル障害の回復率は高く、ますます生涯有病率での議論は意味が乏しい。なお、久里浜調査では生涯の疑いが2013年536万人、2017年320万人と増えている。世界的に見て同じ尺度での調査で減ったケースはないので、2013年536万人の謎については、調査主体に詳細な検討、論文化をお願いしたい。なんといってもその数字が作りだした空気感がギャンブル等依存症対策の根底にあったわけだから。

 以下は、Calado F, Griffiths MD. Problem gambling worldwide: An update and systematic review of empirical research (2000-2015). J Behav Addict. 2016 Dec;5(4):592-613. doi: 10.1556/2006.5.2016.073. Epub 2016 Oct 27. Review.(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5370365/)のまとめと、篠原のコメント。
 Griffithsらは、Scopus, PsycINFO, ScienceDirect, PsycARTICLES, PubMed, Wiley Online Library, ProQuest Dissertations & Theses Academic Search complete, and Google Scholarの研究データベースから、“gambling,” “prevalence,” “problem gambling,” “pathological gambling,” “gambling addiction,” “compulsive gambling,” and “disordered gambling.”で検索。2000年以降、大人の問題または病的ギャンブリング(ギャンブル障害)を調査した研究で、問題または病的ギャンブリング(ギャンブル障害)をアセスメントする標準化された方法を用いており、500名以上が参加し、高齢者、学生といった限定的な調査ではなく全国調査と呼べるものを収集。
 
 30か国、69件の研究が選択され、結果がまとめられている。その詳細は、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5370365/ 表1を参照願いたい。
 ここで注意しておいてもらいたいのは、問題ギャンブラー(problem gambler)、病的ギャンブラー(pathological gambler)と、ギャンブラーズアノニマスなどがいう強迫的ギャンブラー(マスコミ等で取り上げられるような強迫的にギャンブリングをする事例)の区別である。問題ギャンブラーはDSM−5、A基準でいえば2,3点相当が多いがあいまい、病的ギャンブラー(ギャンブル障害者)は4点以上相当、強迫的ギャンブラーは未定義だ8,9点相当、または別軸が必要という点である(wiki ギャンブル依存症 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AE%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AB%E4%BE%9D%E5%AD%98%E7%97%87)。
 したがって人口比でいえば、(過去一年)強迫的ギャンブラー<(過去一年)病的ギャンブラー<(過去一年)問題ギャンブラー<(生涯)強迫的ギャンブラー<(生涯)病的ギャンブラー<(生涯)問題ギャンブラー、なのだが、マスコミ等の報道や国会での議論、関係閣僚会議は、(生涯)病的ギャンブラーの数と、強迫的ギャンブラーの問題のある期間(過去一年相当)を併記してギャンブル問題を議論してきたわけで、正しい実態に基づく議論が望まれる。
 なお、近年の全国調査の傾向は、「病気」かどうかを調べる視点から、病気かどうかは重要な問題としてはとらえずギャンブリングにともなう問題への対処、予防に重点を置く傾向がある。ために過去一年の問題ギャンブラーの疑い数が付される傾向にある。

 以下は、Griffithsらの報告を、生涯有病率、過去一年有病率、回復率でまとめ、日本のデータと比較したもの。同じ国で複数の報告がある場合、最近の研究で集計した。

1) 生涯有病率(生涯のどこかでギャンブル障害の疑い)
 12か国の報告、デンマーク(2006)0.5%〜韓国(2010)3.8%。
 平均1.51%、中央値1.05%。
 日本の3.6%(久里浜、2017)は、12か国では2位相当、韓国、エストニア並みに高い。

ただし、この生涯有病率でギャンブル障害を論ずるのは適当ではない。

2) 過去一年有病率(最近一年間でのギャンブル障害の疑い)
 17か国の報告、オランダ(2011)0.15%〜南アフリカ(2001)4.80%。
 平均、0.88%、中央値0.50%。
日本の0.8%(久里浜、2017)は、20か国中で7位相当で、スウェーデン、オーストリア並み、平均的、もしくはやや高い。
後に述べる修正を加えると、日本は0.5〜0.6%で20か国中10位相当、アイスランド、スイス、フランス並み、まさに平均的。
 DSM-5、2,3点相当の問題ギャンブラーの疑いでは15か国で7位相当、平均的。

3) 回復率((生涯有病率−過去一年有病率)÷生涯有病率×100で算出)
  生涯有病率、過去一年有病率がそろっていたのは7か国。
  フィンランド(2007)38%〜オランダ(2006)70%。
  平均57%、中央値56%。
  日本の77%(久里浜、2017)は7か国より高く1位相当。
  パチンコ・パチスロでのギャンブル障害は回復率が突出して高い可能性がある。


 つまり、日本のギャンブル等依存症(ギャンブル障害)の疑いの比率は、世界的に見て平均的。かつ、回復率がダントツに高い。ここには警察の監督下で射幸性を抑制してきたパチンコ・パチスロという遊技の特殊性がかかわるものと推測される。
 そしてこのぱちんこでの回復率の高さはぱちんこでのギャンブル障害の治療評価における大きな障壁となる。つまり、12ステップであれ、認知行動療法であれ、その治療法の効果を調べるため、対照群(介入を行わない群)を設定したとき、約8割の回復率を有意に上回らなければ、治療法の効果を主張できない。これは相当に難しい課題で、可能性があるとすれば短期間での比較で、対照群より早くよくなる、という方法での主張、もしくは、別軸(発達障害など背景障害で区分など)で問題ギャンブラーを区分し(こういう例が長期化する)、比較検討する手法となろう。ワンデーポートの歩みなどを見ると後者と思える。

 さて、パチンコ・パチスロの特殊性は、秋山らの研究(2017)からも指摘できる。秋山らはパチンコ・パチスロ遊技者を対象に、臨床面接と標準化されたギャンブル障害尺度各種を用いてDSM-5に基づくカットオフ点の算出を行った。その結果、パチンコ・パチスロではより高いカットオフ点が妥当だとした。具体的にはSOGS5点の一般的なカットオフ点が、パチンコ・パチスロでは7,8点が相当で、その分、パチンコ・パチスロではギャンブル障害の疑いとなる人の数が減る。
 久里浜の調査(2017)では70万人のギャンブル障害の疑いのうち、56万人はパチンコ・パチスロによるギャンブル障害の疑いになるが、上記、カットオフ点を採用するとおよそ40万人となり、パチンコ・パチスロに特化した社会安全研究財団調査(2017)の0.4%、40万人とほぼ一致する。
 こう考えると、日本のギャンブル障害の疑いの数は修正が必要となる。過去一年でのギャンブル障害の疑いは、0.8%、70万人から、16万人(56万−40万)少なくなり、54万人、0.5〜0.6%程度となる。
 日本のギャンブル等依存症対策法案や、2017年3月の論点整理(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gambling_addiction/pdf/honbun.pdf)、8月のギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議 (https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gambling_addiction/pdf/gambling_addiction_honbun.pdf)は久里浜の2013年報告の生涯にわたってのギャンブル障害疑い536万人(この数字は2017年報告によって実質的に否定されたとみなせる)の作り出した空気感や、ギャンブル障害は進行性で不可逆的であるという、上記3)で示すように実質的に否定されている前提ですすめられてきている。ギャンブル障害対策が必要という点に疑義を挟むつもりはないが、ここで示したような正しい実態把握を共有し、議論が進むことを望む。

 個人的な感想を言えば、パチンコ・パチスロの高い回復率を見ると、いわゆる射幸性規制のさらなる強化がギャンブル障害対策として本当に必要であったのか疑問だし(他のギャンブリングに比べ一時期はハマっても回復しやすく、よくコントロールされているとみなせる)、社会安全研究財団の調査でパチスロの方がややリスクが高くなっているデータを見ると、パチンコへの設定導入(パチンコのスロット化)がギャンブル障害予防につながるのか疑問である。許認可時に標準釘仕様、開け状態、閉め状態での回転率データを示し(この範囲までを同一性能とみなす:三段階設定のようなもの)、それに基づく数百万回シミュレーションデータを付したうえで、現行の保通協審査を行い、事後調査も行えば、設定の導入は不要だと思う。
 ギャンブル障害、問題ギャンブリングのスクリーニングは、背景障害をあぶりだすための一段階目のスクリーニングとしてとらえ、そこから家族、本人の多様なニーズに合わせた柔軟な対応体制の構築こそ必要だろう。単純嗜癖問題のみなら予防体制の充実がだいじで、そのあたりの対応は関係閣僚会議棟のとりまとめに全く異議はない。

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