コカイン使用障害におけるオキシトシン効果は、性別とトラウマ体験の有無で異なるらしい

 依存症には自己治療仮説がある。何かに依存するのは、こころや体の痛みやストレスから逃れるためで、たとえばトラウマの疼きを自己治療するように薬物等を使用するといったものです。脳でいえば、単に腹側被蓋、側坐核、線条体、腹内側前頭前野といった快感系に出来上がったニューラルネットワークが問題なのではなく、痛みにかかわる島皮質や、嫌悪にかかわる偏桃体(快にもかかわるが)、その抑制にかかわる背内側前頭前野の活動がポイントといった仮説です。
 実際、薬物使用障害や行動嗜癖障害では幼児期の虐待等によるトラウマの関与が重篤化とかかわるケースが少なくなく、またハマる薬物や行為がそれぞれ違うのも関与するニューラルネットワークが異なる故なのではないかと考えられています。一方、日本では自閉スペクトラム障害の治療薬としての可能性が治験されているオキシトシンが、薬物使用障害でのストレス軽減(偏桃体の活動低下など)に役立つのではないかと考えられています。またコカイン使用障害では女性のほうが予後が良くないことも知られています。
 そこで、↓では、コカイン使用障害において、性別と小児期外傷(トラウマ)によって、鼻腔内オキシトシン投与が、コカインキュー反応(コカイン関連映像を見せたときの脳反応)にどのような修飾を与えるのかを調べています。
 具体的には、コカイン依存の男性でトラウマ体験あり(n = 24)となし(n = 19)、女性である(n = 16)となし(n = 8)に分け、コカインの映像刺激後、鼻腔内にプラセボまたはオキシトシン(40 IU)を投与し、fMRIで、右扁桃体、背内側前頭前野(DMPFC)などを測定したそう。
 結果、DMPFCでは、オキシトシンはすべての被験者グループでコカインキューに対するfMRI応答を低下したそう。オキシトシンによってストレスを抑え込む反応が低下しているので、ストレス自体抑制されたのではないかと推測されます。しかし、扁桃体では、小児期のトラウマ体験のある男性のみがfMRI応答の有意な低下。しかし、小児期の外傷の既往がある女性では、逆に増強。トラウマがない場合は偏桃体応答に差はなかったそう。
 つまり、オキシトシンは、コカイン依存症におけるキューの反応性を低下させる可能性はあるが、その効果は性別や小児期のトラウマによって異なり、トラウマを持つ男性はオキシトシン投与の恩恵を受ける可能性がありますが、女性にとって有効な治療薬となりえないかもしれない、とのこと。
Neural correlates of oxytocin and cue reactivity in cocaine-dependent men and women with and without childhood trauma.
Joseph JE, McRae-Clark A, Sherman BJ, Baker NL, Moran-Santa Maria M, Brady KT.
Psychopharmacology (Berl). 2019 Nov 7. doi: 10.1007/s00213-019-05360-7.

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