学習するなら午前中

 東大の清水先生らは、記憶の形成に強くかかわる海馬でSCOPたんぱく質の役割を明らかにしています。SCOP は主に脳神経細胞に発現する分子で、視交叉上核における発現量が日内リズムを示す分子です。 学習刺激が海馬に入ると、神経細胞内のCaイオン濃度が上昇し、タンパク質分解酵素であるカルパインが活性化する。 活性化したカルパインはSCOP を分解し、それまでSCOPに結合して抑制されていたK-Ras が活性化する。K-RasはERK カスケードの活性化を介して長期記憶形成に導くCRE依存的な遺伝子を転写活性化する。こうして記憶が形成されていくわけです。
Proteolytic degradation of SCOP in the hippocampus contributes to activation of MAP kinase and memory.
Shimizu K, Phan T, Mansuy IM, Storm DR.
Cell. 2007 Mar 23;128(6):1219-29.
 清水先生らは、マウスを用いた長期記憶テストを一日のさまざまな時刻に実施。マウスの活動期のはじめに記憶のしやすさが最高に達することを特定。さらに、記憶の日内リズムは海馬に存在する体内時計(海馬時計)が制御しており、遺伝子を操作して海馬時計を止めると長期記憶できなくなることを示しました。そして、この海馬時計はSCOPというタンパク質の量的変化を生み出しており、活動の初めの時期にはK-Rasと結合したSCOPが多く、これが分解されるので、ERK カスケードの活性化、CRE依存的な遺伝子を転写活性化して、記憶力が上昇するというメカニズムを突き止めたわけです。
 マウスの活動期は夜ですが、人では昼に当たり、午前中が学習に向くというわけです。もっとも夜型の人は視交叉上核の影響でずれるかも知らんわけですが。
SCOP/PHLPP1β mediates circadian regulation of long-term recognition memory.
Shimizu K, Kobayashi Y, Nakatsuji E, Yamazaki M, Shimba S, Sakimura K, Fukada Y.
Nat Commun. 2016 Sep 30;7:12926.

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