何かを思い出すということは、思い出すべきでないことを忘れること。さて男女の仲は?

バーミンガム大のMaria Wimberらは、被験者に「ある言葉」と「顔の画像」や「物体の画像」を示し、後に、「ある言葉」と最初に組み合わされていたのはどちらの画像かと聞いた。
その結果、記憶を呼び出しているとき、後頭葉の視覚野では、最初に見せられた画像ではないほうの画像を見たときに現れる脳の活動パターンが減少した。そして、この現象が大きいほど、最初に示されたものではない画像を忘れやすくなることを発見した。

*目からの信号は視床を介して後頭葉(頭の後ろ)へ。
*視交叉:視野の右半分は左脳、左半分は右脳へ。腕や足のように右手、右足は左脳、というわけではない。したがって右脳の視覚野がやられると、左目が見えない感じではなく、視野の左半分が消える感じ。右目も左目も。また、上下の逆転。視野の上半分は視覚野、下方へ。下半分は上方へ。いろんなものを見せたときのこの後頭葉の活動パターンを調べると、何を見ているのかがある程度当てられる。実際は神経活動のパターンをコンピューターに学習させると。ということで、寝ている間の視覚野の活動を調べると、夢の中身も推測できる。

・・・で、「ある言葉」と最初に一緒に提示された「画像」は何なのかを、脳が思い出そうとするとき、見せられた「いろんな画像」を見たときの脳活動パターンがあれこれ再現されるが、最初に提示された「画像」以外の活動パターンが減少して、「あ、あれだ」となる。
つまり、余計なものが消えて、正解が思い浮かんでくる。これが記憶を呼び起こすということらしい。

 このとき脳全体を統括し、他の脳部位の活動抑制などに関わる前頭前野の活動が、記憶の呼び出し時に増す。これが思い出すということの前頭葉側の側面。
そしてその増し方が、後頭葉視覚野での活動パターンの減少を予測する。つまり前頭葉の活動が増すほど、思い出すべきでない活動パターンが抑制される。そしてこの前頭葉の活動増かもまた、「ほかの画像」を忘却する程度を予測した。

 何かのつながりを思い出そうとするときには、ほかのつながりを忘れるということをともなうらしく、ここに前頭葉と後頭葉の連動が伴う。
 たとえば、銀行の暗証番号、すんなり出てくるときは、余計な番号についての脳活動パターンが減少しているのだろう。しかし、違う銀行やネットバンキング用の番号などが出てきてしまうと、本当に思い出したい番号が出てこないことがあるが、これは余計な番号についての脳活動が抑制できないことによるわけだ。

 あるいは、「好きだ」というあなたの言葉が、「ふたりの仲の良い関係イメージ」をともなっていたり、「その後裏切られたイメージ」とも結びいていたりすると、ま、記憶とはそういう連合的なもので、あれこれあった二人の関係とはそういうものだが、このとき、「好きだ」というあなたの言葉が「ふたりの仲の良い関係イメージ」とともに思い出されればよいが、「裏切りのイメージ」が出てくるときには「よいイメージ」は抑制されている。
なかなか出てきてくれなくて、「ほら、こんな楽しいこともあったジャン」といっても無駄になりやすい。
逆に「よいイメージ」をうまいこと繰り返し思い出してもらうことに成功すると、「嫌なイメージ」の忘却の度合いが増していく。
 だから、われわれは奥さんのご機嫌をとろうとし、いいイメージだけに目が向かうようあれこれするわけだ。

しかし、実はこの方法、男性の機嫌を取るには向くが、つまり奥さんが「いいイメージ」でだんなの機嫌をとる方法をとった場合、われわれはころっとだまされ?、いやなことを忘れがちだが、女性はそうでもないらしい。
 というのは、ハーバード大学の研究によると、男性は彼女が幸福なほどパートナー関係がうまくいっていると感じるし、彼女の幸福感を読み取る能力が高いほどふたりはうまくいっていると感じる。つまり、「いい感じ」を増強されると、男はコロッと行きがち。楽しい日々に目を向けさせられると、いい気分だし、嫌なイメージは消えていく。
一方、女性は、パートナーがへこんでいる姿をさらしてくれるとうまくいっていると感じ、
またパートナーが彼女のネガティブな感情を正確に読み取ってくれるとうまくいっていると感じやすいらしい。だから、いいイメージに目を向けさせると、嫌な記憶の忘却は促進されるかもしれないが、二人の関係を浅いものととらえがちになり、「だからこの人は浅い、わたしをわかってくれない」と思いを募らせていく。
そして、男からすると「こんなに機嫌をとってきたのに、いきなり離婚・・・・」なんて羽目になりやすいのかもしれない。
Retrieval induces adaptive forgetting of competing memories via cortical pattern suppression.
Wimber M, Alink A, Charest I, Kriegeskorte N, Anderson MC.
Nat Neurosci. 2015 Apr;18(4):582-9. doi: 10.1038/nn.3973. Epub 2015 Mar 16.

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