寝ている間に脳は配線をととのえ、栄養補給体制をよくする

 睡眠中に記憶の定着が起きることはよく知られており、たとえばピアノ演奏などの「技の記憶」では睡眠を挟むことでそのパフォーマンスが20%増すなどということが報告されています。↓はそのメカニズムの一端を示すかもしれない話。
 中枢神経系には神経細胞ニューロンとその以外のグリア細胞がありますが、グリア細胞の一つにオリゴデンドロサイトという細胞があります。この細胞はニューロンの軸索に巻きついて髄鞘(ミエリン)を形成し情報の伝達速度を格段に上げます。また巻きついたニューロンの維持と栄養補給の働きをもちます。ひとつのオリゴデンドロサイトは数本の突起を伸ばし、それぞれの突起が異なる神経細胞の髄鞘となります。このオリゴデンドロサイトのミエリン形成を促進する遺伝子やオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の増殖を促進する遺伝子が、睡眠中により多く発現することがマウスの実験で示されました。
 特にOPCの増殖は睡眠中に2倍に増え、急速眼球運動(REM)睡眠の時間と正に相関するのだとか。最近の研究では記憶の定着はREM期(はっきりした夢を見る時期)ではなく、深い眠り、徐波睡眠時が中核と考えられていますから、REM期か~という側面がありますが、それでも睡眠による記憶の定着のメカニズムの一端を示すものと思われます。「睡眠中にピアノがうまくなるのは、睡眠中の補足運動野の活動とかかわるhttp://higeoyaji.at.webry.info/201308/article_7.html」では脳波とパフォーマンス向上の関連、GABAによる神経接続向上のメカニズムに触れましたが、寝ている間に脳は配線の被膜をととのえ、栄養補給状態をよくすることもするわけです。
 もっとも、70歳以上の元女性看護師1万5000人を対象にした調査では、毎日7時間寝る人に比べて、睡眠時間が5時間未満の人、また9時間超の人は認知能力が低い傾向があったといった報告が少なからずありますから、ひたすら寝ればいいわけではないことはお忘れなく。深い眠りの時に記憶定着が起きる説に従えば、眠りに落ちて三時間ぐらいが深いですからそこが大事。たぶん。
J Neurosci. 2013 Sep 4;33(36):14288-300. doi: 10.1523/JNEUROSCI.5102-12.2013.
Effects of sleep and wake on oligodendrocytes and their precursors.
Bellesi M, Pfister-Genskow M, Maret S, Keles S, Tononi G, Cirelli C.
Source
Departments of Psychiatry and Biostatistics and Medical Informatics, University of Wisconsin-Madison, Madison, Wisconsin 53719.

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