やられたらやり返す、倍返しだ、は怖い

倍返しは、倍では済まない
「やられたらやり返す、倍返しだ」
「三人まとめて、1000倍返しだ」
コロナ禍での中断を乗り越えた大ヒットドラマ「半沢直樹」のセリフです。
このセリフを聞くたびに、科学雑誌サイエンスに掲載されたロンドン大のウォルパートらの実験を思い出します。
ウォルパートらは、被験者を2人一組のペアにし、手押し相撲のように向き合って相手の手を押すゲームをしてもらいました。
このとき、ウォルパートらは、被験者それぞれに「あなたは、相手に押されたのと同じ強さで押し返してください」とお願いしておきます。交互に押し合うのですが、相手がどういうルールで押し返しているのかはわからないわけです。そして手のひらに圧力センサーを付け、押す強さを計測します。
結果、被験者は、相手が押したのと同じ力で押し返したつもりなのに、実際の押す力は約1.4倍になっていたそう。二回目押すときには一回目の約2倍、8回目には15倍になっていたそう。相手を機械にした場合でも、機械が0.5Nのときは1.5N、2.5Nでは4Nだったとか。
つまり、われわれの感覚はやられた分を正確に査定できず、過大に評価してしまう。やり返し分は過少に評価してしまう。だから、やられた分やり返す「等倍返し」であっても、決して等倍にはならない。けんかは常にエスカレートしてしまう。
倍返しでは数倍返しになる、まして1000倍返しではとんでもないことになるわけです。やり返しは相当に少なくしないとエスカレートは止まらないわけです。

「絆(きずな)」はおそろしい
「半沢直樹」のもう一つの特徴は、半沢を慕う仲間の強い絆(きずな)です。強い友情の絆で敵に、巨悪に立ち向かいます。
絆といえばオキシトシン。オキシトシンは信頼や愛着の形成にかかわる脳内ホルモンと考えられています。
その鼻腔投与で投資ゲーム中に相手を信頼して投資額が増えます。寄付ゲームでは相手に対する同情が高まり相手への施し額が増えます。
顔表情判断では恐怖や不安に強くかかわる扁桃体の反応が低下し、恐怖心が減じ、相手の目を見つめる時間が長くなります。「目による表情読み課題」や心の理論課題での成績がよくなります。
夫婦間のもめごと状況では、会話での好ましい文言や反応が増えたり、親子間の愛着が強まったりもします。さらに自閉スペクトラム症では会話の増加が認められたり、相手の感情理解が改善したりすることが報告され、臨床試験が行われています。
一方で、パートナーのいる男性にオキシトシンを鼻腔投与したところ、魅力的な見知らぬ女性が近づいてきても、距離をとりたがる、遠ざかる傾向が強まったそうで、パートナー間の絆を強め、浮気防止ができる素晴らしいホルモンともいえますが、他者を排除する力を持つホルモンでもあるわけです。
たとえばゲームの中のお金の分配に対して、相手に対する嫉妬が増加したり、相手への負の感情を強めることも報告されています。
結局オキシトシンは愛や絆を強める素晴らしい働きをしますが、それは同時に仲間以外の他者を排除する役割を果たすのです。「半沢直樹」の場合は勧善懲悪、相手が「悪」なのでスッキリしますが、世の中、何が悪で何が善なのかなんて、立場が変われば変わるわけで、「絆」ってまあまあ恐ろしいわけです。

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