相手の記憶は海馬腹側CA1にあり、特定の相手への好みの操作も可能

 海馬は記憶に関係することがよく知られています。このうち腹側CA1という領域が「相手のことを覚えている」ことに直接かかわっていることが、理化学研究所の奥山先生、利根川先生らによって明らかになりました。
 海馬は脳の左右にある小指ほどの器官で、CA1、CA2、CA3、歯状回などからなる層状の構造が長軸方向に続いています。この偏桃体側のCA1が「相手を覚える」ことにかかわるというのです。
マウスはよく知っている相手からは遠ざかり、見知らぬ相手に近づいていくという性質があります。そこで海馬のいくつかの場所の働きを阻害し、この行動パターンを調べたそうです。その結果、腹側CA1領域の興奮を阻害したとき、よく知っているはずのマウスに近づくといった異常行動が認められ、さらに、腹側CA1の神経細胞のある集団がよく知っている特定の相手に反応することが分かったそうです。
マウスは通常、長時間相手と隔離されると相手のことを忘れてしまうのですが、光遺伝学的手法でこの相手のことを覚えていることにかかわる細胞集団を活性化させたところ、相手から遠ざかるようになった、つまり、相手のことを思い出したそうです。
このことは、特定の相手に関する記憶の痕跡(エングラム)が海馬腹側CA1に形成されることが相手のことをおぼえることに直接的にかかわり、かつ、忘れた場合でも記憶痕跡は残っていることを示します。利根川先生らはアルツハイマー様マウスで記憶が失われてはいないことを示しましたが、同様の結果と考えられます。
先生たちはさらに、ある相手に関する記憶エングラムを賦活させながら、電気刺激で恐怖刺激を与えたり、コカインで報酬刺激を与えたりしました。その結果、電気刺激ではその相手を忌避するようになり、逆に報酬刺激では相手に接近行動をとるようになったそうで、特定の相手への好みの操作にも成功しています。
Teruhiro Okuyama, Takashi Kitamura, Dheeraj S. Roy, Shigeyoshi Itohara, and Susumu Tonegawa, "Ventral CA1 neurons store social memory.", Science, doi: 10.1126/science.aaf7003

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