トラウマは世代をまたぐ、幼児虐待は三代たたる?

 ストレスにさらされたマウスは三世代にわたって抑うつ的な行動を示す雄の子孫を持つ。トラウマは個体の心理的な障がいのリスクを高めるだけでなく、次世代にその影響を及ぼす。たとえば、カンボジアのルージュクメールの大虐殺の間に心に傷を受けた人々の子どもは抑うつや不安を抱えたし、ベトナム戦争に行ったオーストラリアの退役軍人子どもたちは高い自殺リスクを抱えた。
 トラウマはエピジェネティック(DNAの遺伝子配列変化を伴わない遺伝)なしるしを残す。DNAがその配列を変えなくとも、その発現に影響を与える科学的な変化を呼び起こす。K.Gappoらは、小さい頃のストレスがマイクロRNAと呼ばれ、遺伝子の発現に影響を与える小さなRNAの量に影響を与え、しかもそれが精子を介して次世代に反映することを示した。親のトラウマが精子を通してこの小さなRNAの変化を伝播するわけだ。
 実際、トラウマを抱えた雄では不安行動やメタボリックシンドロームに関係するマイクロRNAを変化させ(ストレスはメタボ関連のマイクロRNAも変化させる!)、それが精子のマイクロRNAにも反映する。さらにその精子を、卵母細胞に注入するとその行動様式やメタボリックシンドロームが次世代に受け継がれる。世代をまたぐ幼児虐待などの背景に、学習プロセス、親子にわたるDNA遺伝問題の他、こうした体験的トラウマの伝播の道筋が想定されうるわけだ。
Implication of sperm RNAs in transgenerational inheritance of the effects of early trauma in mice.
Gapp K, Jawaid A, Sarkies P, Bohacek J, Pelczar P, Prados J, Farinelli L, Miska E, Mansuy IM.
Nat Neurosci. 2014 May;17(5):667-9. doi: 10.1038/nn.3695. Epub 2014 Apr 13.
 こんな研究も報告されている。Brian Diasらは、サクラの花に似た匂いを恐れるようにマウスを訓練し(匂いと恐怖刺激の条件付けをして)、そのマウスに子孫をもうけさせた。生まれた子孫はサクラの花の香りを嗅いだ経験がないのに、桜の匂いに強い恐怖を示した。孫の世代も同様だった。三世代に体験的トラウマが伝播したわけだ。
 また、サクラの花に恐怖を示す父親の精子で人工授精した子孫にもこの恐怖反応が伝達された。こうした行動を受け継いだものたちは、恐怖にかかわる匂いの検知にかかわる脳領域で構造が変化しており、またその精子では匂いを検知するのに関わる遺伝子に変化が生じていることが示されている。三代たたる、というのもあながち誇張ではないわけだ。
Parental olfactory experience influences behavior and neural structure in subsequent generations.
Dias BG, Ressler KJ.
Nat Neurosci. 2014 Jan;17(1):89-96. doi: 10.1038/nn.3594. Epub 2013 Dec 1.
 子孫と言えば、母胎を大事に、が合言葉だが、とうちゃんも大事にしてね。精子をいい感じにしておくために。
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