記憶は伝言ゲーム

記憶の定着にとって、繰り返しは必要です。出力しないと定着しません。しかしその一方で、記憶は伝言ゲームのように思い出すごとに変化していきます。思い出すごとに神経ネットワークが変化し、その記憶内容(想起内容)が変化します。カウンセリングはこれを利用していますし、繰り返しによる記憶の定着も、実は新しい記憶の創作にほかなりません。
「あなた、あの時、~っていったじゃない!」「いや、そんなことは言っていない」「うそよ、言ったわ!」
わが家でも時折起こる言い合いです。妻も私も自分の記憶が確かなものだと確信しています。事実はひとつのはずなのになぜでしょう。
ノースウエスタン大学のブリッジ博士らは、その謎に挑む実験をしました。彼らは70人の被験者を対象に3日間にわたる記憶実験を行いました。
1日目、被験者にはコンピューター上で180個の物の配置を覚えてもらいました。そして2日目に1度目のテストを実施し、3日目に2度目のテストを行いました。
その結果、すでに2日目には物の配置をほとんど覚えていませんでした。そして面白いことに、3日目のテストでは1日目の正しい配置よりむしろ2日目の誤った配置に近い間違いがたくさん出てきました。3日目の記憶は元の記憶ではなく(一日目の記憶ではなく)、2日目に上書きされた記憶を呼び戻していたのです。
記憶は伝言ゲームのようなもの。伝言ゲームでは人伝いにメッセージが伝わるたびに内容が変わっていきますが、わたしたちの記憶は呼び出すたびに不安定化し、上書きされていくのです。
実際、物を間違った位置に置いた時に脳では強い電気信号が計測されました。Bridge博士によればこの信号こそ新たな記憶が形成されたことを示す証拠だそうです。
Neural Correlates of Reactivation and Retrieval-Induced Distortion. The Journal of Neuroscience, 29 August 2012, 32(35): 12144-12151; doi: 10.1523/JNEUROSCI.1378-12.2012


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