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zoom RSS メディアリテラシーのために、ギャンブル依存を例として

<<   作成日時 : 2017/05/15 00:01   >>

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ギャンブル依存症対策 カジノの免罪符ではなく(毎日新聞2017年5月14日 東京朝刊)
 
 ギャンブル依存症の予防や治療を盛り込んだ法案の提出に向けて、政府・与党は準備を進めている。
 カジノ解禁への批判の中から出てきた動きではあるが、ギャンブル依存症の実態は深刻だ。カジノの免罪符にするのではなく、実効性のある法律にしなければならない。
 ギャンブル好きと依存症は違う。いつも頭の中でギャンブルのことを考え、集中力がなくなり、不眠や幻視などが表れる人もいる。それがギャンブル依存症だ。世界保健機関(WHO)が定める疾患である。
 多重債務、虐待や暴力につながるだけでなく、強盗や横領などの犯罪を引き起こすことも多い。治療施設で専門的なケアが必要なのに、「意志が弱い」「自制心がない」などと個人的な性格の弱さのせいにされることがよくある。
 厚生労働省研究班が3月に公表した都市部の調査結果では、ギャンブル依存症が疑われる成人の割合は2・7%(全国推計では283万人)。アルコール依存症の推計1・0%より高い。23兆円市場ともいわれるパチンコ・パチスロが日本の依存症の大きな原因とも指摘される。
 近年は公営ギャンブルもパチンコも市場が縮小しており、より射幸心をあおる機種やルールに変更する傾向がある。利用者数は減っているが、1人がギャンブルにつぎ込む金額は増えており、依存症になるリスクは高まっていると言える。
 政府が検討している法案は、本人や家族の申告による競馬場やパチンコ店の入場規制、パチンコの出玉規制の基準見直し、馬券売り場にある現金自動受払機(ATM)のキャッシング機能の廃止などが内容だ。中高生や大学生向けの予防・啓発も検討されている。
 ギャンブルは種別によって所管官庁が多岐に分かれており、調整は容易ではない。業界や地方自治体からの抵抗も予想される。しかし、実効性の薄い法案になったのでは、やはりカジノ解禁の免罪符に使われたとの批判は免れないだろう。
 子ども連れでもパチンコ店などに自由に出入りできるのが日本の現状だ。低年齢児などの入場制限や、射幸心をあおらない規制などの予防策はできるはずだ。政治主導で厳しい対策を打ち出すべきだ。

 以上が社説の記事です。主張の方向には全く同意しますが、ギャンブリング障害(ギャンブル依存)の実態は不明な点が多く、ミスリードが生じやすくなります。何か所か取り出しながら、実態を確認していきましょう。

「ギャンブル好きと依存症は違う。いつも頭の中でギャンブルのことを考え、集中力がなくなり、不眠や幻視などが表れる人もいる。それがギャンブル依存症だ。世界保健機関(WHO)が定める疾患である。」

 WHOによる疾病分類はICD10によって行われています。現在、いわゆるギャンブル依存は「病的賭博」ですが、ICD11(2018年リリース予定)では「ギャンブリング障害(ギャンブル障害:邦訳)」となることが見込まれています。以下が診断ガイドラインです。

・持続的に繰り返されるギャンブリング。
・貧困になる、家族関係が損なわれる、個人的な生活が崩壊するなどの、不利な社会的結果を招くにもかかわらず、持続し、しばしば増強する。

 精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM−5)もよく用いられます。

A.臨床的に意味のある機能障害または苦痛を引き起こすに至る持続的かつ反復性の問題賭博行動で、その人が過去12か月間(注:in a 12-month periodなので、ある12か月間)に以下のうち4つ(またはそれ以上)を示している。
(1)興奮を得たいがために、掛け金の額を増やして賭博をする欲求
(2)賭博をするのを中断したり、または中止したりすると落ち着かなくなる、またはいらだつ
(3)賭博をするのを制限する、減らす、または中止するなどの努力を繰り返し成功しなかったことがある
(4)しばしば賭博に心を奪われている(例:次の賭けの計画を立てること、賭博をするための金銭を得る方法を考えること、を絶えず考えている)
(5)苦痛の気分(例:無気力、罪悪感、不安、抑うつ)のときに、賭博をすることが多い
(6)賭博で金をすった後、別の日にそれを取り戻しに帰ってくることが多い(失った金を“深追いする”)
(7)賭博へののめり込みを隠すために、嘘をつく
(8)賭博のために、重要な人間関係、仕事、教育、または職業上の機会を危険にさらし、または失ったことがある
(9)賭博によって引き起こされた絶望的な経済状況を免れるために、他人に金を出してくれるよう頼む
B.その賭博行為は、躁病エピソードではうまく説明されない。
▶該当すれば特定せよ・・・挿話性(数か月は軽快する)、持続性(何年も当てはまる)
▶該当すれば特定せよ・・・寛解早期(3か月以上12か月未満基準を満たさない)、寛解持続(12か月以上基準を満たさない)
▶現在の重症度を特定せよ・・・軽度(4,5項目)、中等度(6,7項目)、重度(8,9項目)

 「臨床的に意味のある機能障害または苦痛を引き起こすに至る〜」という表現は、アルコール使用障害、精神刺激薬使用障害などの「物質関連障害および嗜癖性障害群」では共通に用いられている表現です。ここで注意すべきは、物質関連障害にならって、どこかの時点で基準を満たせば、以後、一生、ギャンブリング障害とみなされる点です。他の障害ではこれは生涯有病率に当たります。

 厚生労働省研究班が3月に公表した都市部の調査結果では、ギャンブル依存症が疑われる成人の割合は2・7%(全国推計では283万人)。

 の2.7%はこの生涯有病率にあたります。一方、このとき、過去一年での推計も示されており、そちらは0.6%となっています。しかし、993名中5名があてはまったという調査に過ぎず、1,2名が動けば変わる数字で(とくに数として推計する場合は大きく動く)、今後のより大規模な調査の結果が待たれます。
 また現在の重症度の特定はいま現状での対策を考える上でだいじです。よくマスコミでギャンブリング障害として紹介されるケースは、(8)賭博のために、重要な人間関係、仕事、教育、または職業上の機会を危険にさらし、または失ったことがある(9)賭博によって引き起こされた絶望的な経済状況を免れるために、他人に金を出してくれるよう頼む、が長期にわたって繰り返されているケースです。これは重度の中の重度となることも踏まえておきましょう。ギャンブリング障害の疑いのうち重度の比率は10〜30%程度と見込まれ、さらに絞り込まれるわけです。また、寛解持続等、自然回復が4〜9割見込まれており、「治療施設で専門的なケアが必要」な数はさらに絞られます。もちろんそれでも少なからぬ数であるわけで、適切な対応の立案は必須です。
 少しややこしい話になりますが、後に述べるようにこの基準は操作的なものなので、「重度」が「重篤」とは限らず、要治療かどうかは別の基準が必要なのではないかといった議論もあります(例えば合併障害、両価性など)。

 なお、

 いつも頭の中でギャンブルのことを考え、集中力がなくなり、不眠や幻視などが表れる人もいる。

 の、「集中力がなくなり、不眠や幻視などが表れる」は、DSM−5の基準でわかるように、ギャンブリング障害の基準とは異なります。
 一方で、ギャンブリング障害では併存障害の存在が指摘され、リカバリーサポートネットというぱちんこ問題に関するヘルプラインの2016年の利用者聞き取り調査では狭義の精神障害(うつ、統合失調)が16%と報告しています。また、Dowlingらの調査(2015)では、アルコール依存15.2%、アルコール以外の薬物依存4.2%、うつ病29.9%、躁うつ病8.8%、統合失調症4.7%、パニック障害13.7%、社交不安14.9%、PTSD12.3%、注意欠如多動性障害9.3%などで合併障害全体では74.8%に上ることが報告されています。ギャンブリングの問題はギャンブリングの問題としてだけで解決できるわけではないことが示唆されています。
 集中力問題ならもしかするとADHD関連、不眠ならうつ、幻視なら統合失調症などを疑ったほうがいいかもしれません。医療によるアセスメント、もしくはこうした合併障害の存在を疑った対応が必要です。
 なお、マスコミでは、ギャンブリング障害の特効薬のようにグループミーティングが扱われる場合がありますが、その適応は2割にとどまるとの指摘もあり、個々人にあったアセスメントと対応が求められています。
 さて、こうした診断基準についてぜひ留意しておきたいことがあります。それは、これらの基準は「操作的基準」と呼ばれ、「これを満たせば病気」といったたぐいの基準ではないということです。便宜的に基準を立て、調査研究を行い(基準がないと調査にならない)、「ギャンブリング障害」の実態や対処法を明らかにしていくための仮設的な基準にすぎないということです。

 こまかな突っ込みを入れていくと、

 利用者数は減っているが、1人がギャンブルにつぎ込む金額は増えており

 で、たしかに一人がギャンブルにつぎ込む金額の平均は増えていますが、つぎ込む金額の大きい人が残ったのか、個々人の消費額が本当に増えたのか、そのいずれもであるのか等は、実はデータ的な裏付けが乏しいことも知っておきましょう。結果としてこの主張がたぶん正しいと思いいますが、横断データと縦断データでは読み取られることが違うことは大学生として知っておきましょう。
 同様に、

 強盗や横領などの犯罪を引き起こすことも多い。

 についても、警察がギャンブル依存に由来する犯罪(この言葉は間違っていると思いますが)の統計を明らかにしているので、遊技人口比で比べて統計的に多いといえるのか、確かめておきましょう。

 子ども連れでもパチンコ店などに自由に出入りできるのが日本の現状だ。

 も、競馬場などはそうなのかもしれませんが、現在のパチンコ店で子どもの入場はできません。特に、駐車場などでの熱中症問題が生じて以降、随時、見回りが行われており、子どもを連れてくることはできません。

 繰り返しますが、この記事の方向性や主張は正しいと思いますが、ディテールにはミスリードを生みやすい部分もあります。社説もそうですし、ツイッターなどではよりそうですが、制限のある字数での表現は制約を受けます。とりあえずの大学生の姿勢としては、疑いを持って確かめる、特に数的ボリューム感を正確に捉えようとする姿勢を持ちましょう。正しい規模把握に基づく、適切な批判、これがないと政策が作れません。予算規模が読めません。



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